居候と人妻 真弓 (完)
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一年間浪人生として過ごした拓実が再び挑んだ大学受験。
拓実本人はもちろん、真弓も気が気でない気持ちで合否が出る日を待っていた。
拓実はこの一年間、とても勉強に集中できたとは言い難い生活を送ってしまった。
それだけに真弓は拓実以上に結果を心配していた。
だが意外にも、結果は第一志望の大学に合格。
晴れて拓実は浪人を卒業する事になった。
その結果に真弓も拓実も、もちろん大喜びした。
しかし、それと同時に二人の別れの時はすぐそこにまで近づいていた。
そして丁度同じタイミングで、真弓の夫である正人から
「海外での勤務が終わり、近く帰国する」
と、連絡が入った。
夫の正人が帰って来た時点で、真弓と拓実の恋の時間は終了する。
別れの時がやってくる事は分かっていたけれど、なるべく考えないようにして生活してきた。
でもいざ、その時が近づくと、一気に寂しさが膨れ上がってくる。
そして正人が帰ってくる日の前日、真弓と拓実は最後の時間を共に過ごしていた。
「ねぇ拓実くん、一年間楽しかったね。」
「はい、あの……すごく楽しかったですし、幸せでした。」
「私も、幸せだった……かな。」
「……。」
「寂しくなるね。」
「……はい、めちゃくちゃ寂しいです。」
どうしても二人の表情は暗くなる。
もちろん真弓も拓実も、本当にこれで終わりで良いのかと、考えた。
でも真弓は夫の正人と別れる事は考えられなかったし、拓実も正人から真弓を奪う事は考えられなかった。
お互いにそれを話し合ったわけじゃない。
でも二人ともそれを察し合っていた。
別れを受け入れるしかない、と。
「本当にもう、お別れなんだね。」
「そんな、二度と会えないような事言わないでくださいよ。」
「……会えないよ。」
「えっ?」
「会えないよ。」
「でもどこかでその……たまに会うくらい……ダメなんですか?」
「ダメ、会ったら私……会っちゃったら私、我慢できなくなっちゃうもん。」
「……」
「だからね、本当にお別れだよ、拓実くん。」
「……そんな……」
「私だって寂しいよ……拓実君に会いたいよ……でも、ダメなの……」
「……真弓さん……」
「……ごめんね……」
「……。」
拓実は目に涙を浮かべていた。
そんな拓実を、真弓はそっと抱きしめた。
そして真弓は拓実の耳元でこう囁いた。
「……だから拓実くん……最後に抱いて……」
「……真弓さん……ああ……真弓さん!」
拓実は真弓を押し倒し、真弓も拓実を強く抱きしめた。
二人は衣服を脱がし合い、一糸纏わぬ裸になって、互いの心と身体を貪り合うように求め合った。
最後の晩餐ならぬ、最後のセックスを真弓と拓実は味わい尽くした。
真弓に別れを告げられ、最初泣いていたのは拓実の方だったが、セックス中は逆に真弓の方が沢山泣いてしまっていた。
「はぁああっ!拓実くんっ!好き!好きなの!大好き!ああっ!拓実くんっああっい……いくっ……いくぅ!」
真弓は涙を流しながら何度もオーガズムに達した。
感情の高まりと共に感度も上がってしまったのか、真弓はいつもにも増して大きく昇天していた。
愛に満ちたセックスとは違う、恋で夢中になるセックスとも違う、別れのセックスは、また違った味わいだった。
真弓は拓実にキスマークは付けないでと言ったけれど、拓実は聞いてくれなくて、身体の至るとこに沢山跡を付けられた。
服で隠せる場所だけだったから良かったけれど、これで正人が帰ってきても数日は正人の前で裸になる事はできなくなってしまった。
でも途中からそんな事はどうでも良くなって、真弓も拓実の身体に沢山キスマークを付けた。
汗だくになって、溶け合って、互いに〝好き〟と何度も言い合った。
射精は膣奥に数回、口の中にも数回出してもらい、真弓は拓実の味をじっくりと味わった。
そしてセックスが終わった後は、裸で抱き合ったまま最後の時間を過ごした。
「この時間が永遠に続けばいいのにね。」
「……ほんとですね。」
「……あ〜ぁ、お別れなんて嫌だなぁ……会えないなんて嫌だなぁ……」
「真弓さん……」
「さっき言ってた事と真逆じゃんって思ったでしょ?」
「……はい。」
「だって嫌なんだもん。」
そんな会話をしながら、笑ったり泣いたりしていたら、二人ともいつの間にか手を握り合ったまま眠っていた。
※
「おお拓実君!第一志望合格したんだってな、おめでとう!」
「ありがとうございます。」
「真弓が勉強の邪魔をしたりしなかったか?」
「いえそんな事は、真弓さんにはその……本当にお世話になりました。」
拓実は帰ってきた正人にそんな風に声をかけられたが、罪悪感で正人の顔をあまり見る事ができなかった。
真弓も正人の横で笑顔を作っていたが、やはり気持ちは複雑だ。
でもそんな真弓や拓実の不自然さに、夫の正人は全く気づいていないようだった。
夫の正人が帰ってきて、真弓はその夫の隣に妻として立っている。これが現実だ。
真弓はもう、正人の妻に戻らなければならない。
その夜、正人の帰国と拓実の合格祝いを兼ねて、三人は以前にも行った中華料理屋で食事をする事になった。
「あ〜この味この味、ここの中華がずっと恋しかったんだよ。」
久しぶりに帰ってきた正人は終始ご機嫌で楽しそうに食事をしていた。
しかしその横で笑顔を作っていた真弓の気分は沈むばかりだった。
目の前に座っている拓実の顔を時折見つめて、真弓はこの一年の事を思い起こしていた。
『拓実く〜ん!ご飯できたよ!』
『うわぁ!今日もご馳走ですね!』
『遠慮しないで沢山食べてねっ』
真弓は自分が作った料理を拓実が美味しそうに食べているのを見るのが好きだった。
でも、もうその時間は戻ってこない。
『はぁ!真弓さん……好きです!はぁ!』
『拓実くんっ……はぁ!私もっ……』
セックスも。
もう二度と身体を重ねる事はできない。
拓実の匂いも体温も、もう感じる事はできない。
もう二度と拓実に抱きしめてもらう事はできない。
「……ぅ……」
我慢していても、涙が溢れそうになる。
そして心の中で葛藤が始まり、胸が苦しくなる。
……これで本当にいいの……?……わたし……
……どうしよう私……拓実君と離れたくないよ……
途中、耐えられなくなって真弓は席を外して手洗いに行った。
そこで涙を拭いて、一度気分を落ち着かせようとするが、無理だった。
そしてどうしたらいいのか分からないまま、気持ちの整理がつかないまま、もう一度涙を拭いてから席へ戻った。
しかしそこで、話は意外な展開に動いた。
それは正人が始めた会話から始まった。
「そういえば、拓実君は引越し先は決まったのか?」
「は、はい……まだ書類とか正式な契約は来週なんですけど、一応物件はもう決まってます。」
「そうか〜、でも拓実君の大学の近くだと家賃も結構高いだろ?」
「そうですね、安いところを探していたんですけど、なかなか無くて。」
「お父さんは援助してくれるって?」
「いえ、自分でなんとかしろって言われてます。」
「そりゃ厳しいなぁ、あのお父さんならそうだよな、大変だなぁ。」
「それでも学費は出してもらえるので、父には感謝しています。浪人も許してもらいましたし。」
「そうか、そうだよな。」
うんうんと頷く正人。
しかしその後、急に閃いたように正人はこんな事を言い始めた。
「あっ、でも拓実君の大学ならさ、うちから通えなくもないよな?」
「……えっ?」
「……えっ?」
真弓と拓実の口から、同時に声が出た。
「電車は使う事になるけど、問題なく通えるんじゃないか?」
「え……あ、そ、そうですね……通えない事は……」
「じゃあうちに引き続き住めば良いじゃないか!どうだ拓実君、真弓の手料理もつくし、家賃もいらないぞ?」
「えっ!?そ、それはでも……さすがにご迷惑じゃ……」
拓実は目を丸くして真弓の方を見た。
もちろん真弓も目を丸くしていた。
「そんな事ないよ、なぁ真弓、俺たちは別に構わないよな?」
「え?……わ、私は……」
正人からの思わぬ提案に、真弓は頭を混乱させながら必死に答えを探した。
でもどれだけ探しても答えは一つしかなかった。
そして真弓はゆっくりと口を開いた。
「私は……いいよ、拓実君がそうしたいなら。」
「真弓も拓実君が居てくれた方が毎日楽しいだろ?」
「う、うん……そうだね。」
真弓は拓実の方を見ながらそう答えた。
拓実は困惑した表情で真弓と目を合わせてきた。
「どうだ拓実君、アパートもまだ契約までしてないなら、そういう選択肢もあるぞ。」
「……そんな……」
言葉に詰まり、もう一度真弓を見つめる拓実。
どうしたら良いのか分からないといった表情だ。
拓実もきっと混乱した頭の中で答えを探しているのだろう。
しかし拓実の頭の中にある答えも、一つしかなかった。
そしてしばらく考えた後、拓実は口を開いた。
「……本当に良いんですか?」
「そりゃ良いに決まってるだろ、俺と真弓に遠慮する事なんてないんだから。」
「……じゃ、じゃあ……またあのお家にお世話になっても……」
「ああ、良いさ!」
「……あ、ありがとうございます!」
「よし!じゃあ決まりだな!真弓良かったな、拓実君が居なくなったら寂しかっただろ?」
「……う、うん……」
……うそでしょ……これ、夢なんかじゃないよね……?
夫の正人は上機嫌で酒と料理に夢中になっている。
その横で真弓と拓実が見つめ合う。
二人とも涙目だった。
これは、夢じゃない、現実だ。
そう分かった瞬間、二人は笑顔になった。
そして真弓はテーブルの下で拓実の足をコツンと軽く蹴ってこう言った。
「拓実くん、これからもよろしくね!」
「……は、はい!」
完
『居候と人妻 真弓』を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
連載開始から完結まで大変長くなってしまいましたが、皆さんの応援のお陰でなんとか完結まで辿り着く事ができました。
何年にも渡って励ましや応援のコメントをくださり、本当にありがとうございました。
それがなかったら本当に心の折れてました。(なかなかコメントへの返事もできず申し訳ありません)
そしてこれからもさらに楽しんでもらえる作品が書けるように頑張っていきますので、これからも宜しくお願い致します。

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拓実本人はもちろん、真弓も気が気でない気持ちで合否が出る日を待っていた。
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それだけに真弓は拓実以上に結果を心配していた。
だが意外にも、結果は第一志望の大学に合格。
晴れて拓実は浪人を卒業する事になった。
その結果に真弓も拓実も、もちろん大喜びした。
しかし、それと同時に二人の別れの時はすぐそこにまで近づいていた。
そして丁度同じタイミングで、真弓の夫である正人から
「海外での勤務が終わり、近く帰国する」
と、連絡が入った。
夫の正人が帰って来た時点で、真弓と拓実の恋の時間は終了する。
別れの時がやってくる事は分かっていたけれど、なるべく考えないようにして生活してきた。
でもいざ、その時が近づくと、一気に寂しさが膨れ上がってくる。
そして正人が帰ってくる日の前日、真弓と拓実は最後の時間を共に過ごしていた。
「ねぇ拓実くん、一年間楽しかったね。」
「はい、あの……すごく楽しかったですし、幸せでした。」
「私も、幸せだった……かな。」
「……。」
「寂しくなるね。」
「……はい、めちゃくちゃ寂しいです。」
どうしても二人の表情は暗くなる。
もちろん真弓も拓実も、本当にこれで終わりで良いのかと、考えた。
でも真弓は夫の正人と別れる事は考えられなかったし、拓実も正人から真弓を奪う事は考えられなかった。
お互いにそれを話し合ったわけじゃない。
でも二人ともそれを察し合っていた。
別れを受け入れるしかない、と。
「本当にもう、お別れなんだね。」
「そんな、二度と会えないような事言わないでくださいよ。」
「……会えないよ。」
「えっ?」
「会えないよ。」
「でもどこかでその……たまに会うくらい……ダメなんですか?」
「ダメ、会ったら私……会っちゃったら私、我慢できなくなっちゃうもん。」
「……」
「だからね、本当にお別れだよ、拓実くん。」
「……そんな……」
「私だって寂しいよ……拓実君に会いたいよ……でも、ダメなの……」
「……真弓さん……」
「……ごめんね……」
「……。」
拓実は目に涙を浮かべていた。
そんな拓実を、真弓はそっと抱きしめた。
そして真弓は拓実の耳元でこう囁いた。
「……だから拓実くん……最後に抱いて……」
「……真弓さん……ああ……真弓さん!」
拓実は真弓を押し倒し、真弓も拓実を強く抱きしめた。
二人は衣服を脱がし合い、一糸纏わぬ裸になって、互いの心と身体を貪り合うように求め合った。
最後の晩餐ならぬ、最後のセックスを真弓と拓実は味わい尽くした。
真弓に別れを告げられ、最初泣いていたのは拓実の方だったが、セックス中は逆に真弓の方が沢山泣いてしまっていた。
「はぁああっ!拓実くんっ!好き!好きなの!大好き!ああっ!拓実くんっああっい……いくっ……いくぅ!」
真弓は涙を流しながら何度もオーガズムに達した。
感情の高まりと共に感度も上がってしまったのか、真弓はいつもにも増して大きく昇天していた。
愛に満ちたセックスとは違う、恋で夢中になるセックスとも違う、別れのセックスは、また違った味わいだった。
真弓は拓実にキスマークは付けないでと言ったけれど、拓実は聞いてくれなくて、身体の至るとこに沢山跡を付けられた。
服で隠せる場所だけだったから良かったけれど、これで正人が帰ってきても数日は正人の前で裸になる事はできなくなってしまった。
でも途中からそんな事はどうでも良くなって、真弓も拓実の身体に沢山キスマークを付けた。
汗だくになって、溶け合って、互いに〝好き〟と何度も言い合った。
射精は膣奥に数回、口の中にも数回出してもらい、真弓は拓実の味をじっくりと味わった。
そしてセックスが終わった後は、裸で抱き合ったまま最後の時間を過ごした。
「この時間が永遠に続けばいいのにね。」
「……ほんとですね。」
「……あ〜ぁ、お別れなんて嫌だなぁ……会えないなんて嫌だなぁ……」
「真弓さん……」
「さっき言ってた事と真逆じゃんって思ったでしょ?」
「……はい。」
「だって嫌なんだもん。」
そんな会話をしながら、笑ったり泣いたりしていたら、二人ともいつの間にか手を握り合ったまま眠っていた。
※
「おお拓実君!第一志望合格したんだってな、おめでとう!」
「ありがとうございます。」
「真弓が勉強の邪魔をしたりしなかったか?」
「いえそんな事は、真弓さんにはその……本当にお世話になりました。」
拓実は帰ってきた正人にそんな風に声をかけられたが、罪悪感で正人の顔をあまり見る事ができなかった。
真弓も正人の横で笑顔を作っていたが、やはり気持ちは複雑だ。
でもそんな真弓や拓実の不自然さに、夫の正人は全く気づいていないようだった。
夫の正人が帰ってきて、真弓はその夫の隣に妻として立っている。これが現実だ。
真弓はもう、正人の妻に戻らなければならない。
その夜、正人の帰国と拓実の合格祝いを兼ねて、三人は以前にも行った中華料理屋で食事をする事になった。
「あ〜この味この味、ここの中華がずっと恋しかったんだよ。」
久しぶりに帰ってきた正人は終始ご機嫌で楽しそうに食事をしていた。
しかしその横で笑顔を作っていた真弓の気分は沈むばかりだった。
目の前に座っている拓実の顔を時折見つめて、真弓はこの一年の事を思い起こしていた。
『拓実く〜ん!ご飯できたよ!』
『うわぁ!今日もご馳走ですね!』
『遠慮しないで沢山食べてねっ』
真弓は自分が作った料理を拓実が美味しそうに食べているのを見るのが好きだった。
でも、もうその時間は戻ってこない。
『はぁ!真弓さん……好きです!はぁ!』
『拓実くんっ……はぁ!私もっ……』
セックスも。
もう二度と身体を重ねる事はできない。
拓実の匂いも体温も、もう感じる事はできない。
もう二度と拓実に抱きしめてもらう事はできない。
「……ぅ……」
我慢していても、涙が溢れそうになる。
そして心の中で葛藤が始まり、胸が苦しくなる。
……これで本当にいいの……?……わたし……
……どうしよう私……拓実君と離れたくないよ……
途中、耐えられなくなって真弓は席を外して手洗いに行った。
そこで涙を拭いて、一度気分を落ち着かせようとするが、無理だった。
そしてどうしたらいいのか分からないまま、気持ちの整理がつかないまま、もう一度涙を拭いてから席へ戻った。
しかしそこで、話は意外な展開に動いた。
それは正人が始めた会話から始まった。
「そういえば、拓実君は引越し先は決まったのか?」
「は、はい……まだ書類とか正式な契約は来週なんですけど、一応物件はもう決まってます。」
「そうか〜、でも拓実君の大学の近くだと家賃も結構高いだろ?」
「そうですね、安いところを探していたんですけど、なかなか無くて。」
「お父さんは援助してくれるって?」
「いえ、自分でなんとかしろって言われてます。」
「そりゃ厳しいなぁ、あのお父さんならそうだよな、大変だなぁ。」
「それでも学費は出してもらえるので、父には感謝しています。浪人も許してもらいましたし。」
「そうか、そうだよな。」
うんうんと頷く正人。
しかしその後、急に閃いたように正人はこんな事を言い始めた。
「あっ、でも拓実君の大学ならさ、うちから通えなくもないよな?」
「……えっ?」
「……えっ?」
真弓と拓実の口から、同時に声が出た。
「電車は使う事になるけど、問題なく通えるんじゃないか?」
「え……あ、そ、そうですね……通えない事は……」
「じゃあうちに引き続き住めば良いじゃないか!どうだ拓実君、真弓の手料理もつくし、家賃もいらないぞ?」
「えっ!?そ、それはでも……さすがにご迷惑じゃ……」
拓実は目を丸くして真弓の方を見た。
もちろん真弓も目を丸くしていた。
「そんな事ないよ、なぁ真弓、俺たちは別に構わないよな?」
「え?……わ、私は……」
正人からの思わぬ提案に、真弓は頭を混乱させながら必死に答えを探した。
でもどれだけ探しても答えは一つしかなかった。
そして真弓はゆっくりと口を開いた。
「私は……いいよ、拓実君がそうしたいなら。」
「真弓も拓実君が居てくれた方が毎日楽しいだろ?」
「う、うん……そうだね。」
真弓は拓実の方を見ながらそう答えた。
拓実は困惑した表情で真弓と目を合わせてきた。
「どうだ拓実君、アパートもまだ契約までしてないなら、そういう選択肢もあるぞ。」
「……そんな……」
言葉に詰まり、もう一度真弓を見つめる拓実。
どうしたら良いのか分からないといった表情だ。
拓実もきっと混乱した頭の中で答えを探しているのだろう。
しかし拓実の頭の中にある答えも、一つしかなかった。
そしてしばらく考えた後、拓実は口を開いた。
「……本当に良いんですか?」
「そりゃ良いに決まってるだろ、俺と真弓に遠慮する事なんてないんだから。」
「……じゃ、じゃあ……またあのお家にお世話になっても……」
「ああ、良いさ!」
「……あ、ありがとうございます!」
「よし!じゃあ決まりだな!真弓良かったな、拓実君が居なくなったら寂しかっただろ?」
「……う、うん……」
……うそでしょ……これ、夢なんかじゃないよね……?
夫の正人は上機嫌で酒と料理に夢中になっている。
その横で真弓と拓実が見つめ合う。
二人とも涙目だった。
これは、夢じゃない、現実だ。
そう分かった瞬間、二人は笑顔になった。
そして真弓はテーブルの下で拓実の足をコツンと軽く蹴ってこう言った。
「拓実くん、これからもよろしくね!」
「……は、はい!」
完
『居候と人妻 真弓』を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
連載開始から完結まで大変長くなってしまいましたが、皆さんの応援のお陰でなんとか完結まで辿り着く事ができました。
何年にも渡って励ましや応援のコメントをくださり、本当にありがとうございました。
それがなかったら本当に心の折れてました。(なかなかコメントへの返事もできず申し訳ありません)
そしてこれからもさらに楽しんでもらえる作品が書けるように頑張っていきますので、これからも宜しくお願い致します。

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他の作品もぜひ読んでいただけると嬉しいです。
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